寒い時期の体育ローテーション
- 其の一.冬を見越した年間カリキュラムを作成するべし
- 其の二.ウォーミングアップの時間を重視するべし
- 其の三.怪我に注意するべし冬の三箇条
今年は全国的に暖冬とはいえ、やはり朝夕の冷え込みは厳しいものがあります。そんな季節は子どもたちのモチベーションを上げるのにたいへん苦労されているのではないでしょうか。
「さあ、ローテーション始めるよー!」と元気よく先生が声をかけても、「ガクガクガク~、寒いよ~」と子どもの元気のない声が返ってきて、(どうすればいいのかしら)という相談をよく受ける季節でもあります。
日本で生きる私たちは、四季を感じ、その中で生活をしています。従いまして、暑い日もあれば寒い日もあるというのがこの国に住む私たちにとって必然でもあり、すばらしさとも言えるのでしょう。しかしながら、体育ローテーションは四季を越えた不変的なものと捉えている先生方も少なくないようです。つまり、毎日同じことをくりかえし実施することで効果をあげようとするあまり、子どもたちに『しなければならない』という強制に近い形で体育ローテーションが進んでしまうことも多いようです。
子どもたちの「寒いよ~」の声に対して、「がまんしてがんばりなさい!」ではなく、「ほら、外を見てごらん。みんな楽しそうね。先生と一緒に行ってみようよ」と言えるようにするためには、やはり、先生のポジティブな発想と、実際に子どもたちにとって魅力的な体育ローテーションであるということが前提となるのでしょう。
では、どうすれば寒い日に楽しさを実感できる体育ローテーションにできるのかを考えていきましょう。
其の一.冬を見越した年間カリキュラムを作成するべし
カリキュラム作成にあたっては、気候の良い時期、雨の多い時期、暑い時期、そして寒い時期と四季を見越した計画が必要になります。月ごとで考えてみましょう。
- 4月…入園、進級と何かとバタバタしてしまう時期。子どもたちにとっても戸惑いの多い時期です。体育ローテーションの基本をしっかり押さえていきましょう。
- 5月…よい季節です。しかしながらゴールデンウィークが明けると退行現象がみられる子も。梅雨までに何とか軌道に乗せていきたいものです。
- 6月…雨の日が多くなります。外での体育ローテーションができなくなることも多い時期です。雨の日の体育ローテーション対策はこの時期までにしっかりと。
- 7月…幼稚園は月末には終業を迎えます。暑くなりはじめるこの時期、子どもたちもダラダラしてしまうことも多くなります。また、保育園は8月に向けて惰性にならないよう気をつけて。
- 8月…保育園、夏期保育ではこの月も実施。7月末から8月はとくに暑さに注意。ウォーミングアップを軽めにしながら、子どもの体力を考慮することも必要。健康面にも注意。
- 9月…まだまだ残暑厳しい月。運動会シーズン突入。この時期までに運動会種目を意識したプログラムも考えておく必要あり。
- 10月…スポーツの秋。運動会を経験してひとまわり大きく成長するこの時期。たいへんよい時期です。大幅なステップアップを視野に入れていきましょう。ただしマンネリ化してくるのもこの時期から。気をつけて。
- 11月…引き続きよい時期です。しかし、文化祭・バザー・音楽会と催し物が目白押し。先生自身もバタバタします。「今日はローテーション中止にして合奏の練習をします」なんて言わないで!
- 12月…最近は暖冬でこの時期も比較的寒さは大丈夫。しかしながら寒い冬に備えて、登り棒や外での鉄棒などは、この時期頃にはひと段落。これからステップアップが難しい時期に入ります。
- 1月…本格的な寒さが到来。子どもの動きが鈍くなるころ。ウォーミングアップの時間を多めにとりながら、まずはモチベーションをあげることに重点をおきます。導入ゲームもいろいろ考えてみましょう。
- 2月…一段と寒さも増します。1月、2月は種目のステップアップより、モチベーションの持続が大きな課題。楽しいからもっとやりたい!の声がどうしたら聞けるか考えましょう。
- 3月…春の訪れを感じる時期。寒さを乗り越え子どもたちは、気候がよくなりはじめると精神的な成長を発揮。卒園、進級に向け、この一年間のがんばりを評価してあげたいまとめの月。
このように、段階的なカリキュラムに加え、季節的なことも考慮したものを作成する必要があるということです。
其の二.ウォーミングアップの時間を重視するべし
体育ローテーション時間は、準備や片付け、準備運動やランニングなども含め、約30分の設定が平均的です。気候のよい時期は基本的な時間配分で規則正しく進行していきます。ただし、寒い時期については、体育ローテーションを始める前に、鬼ごっこを入れたり、ダンスを入れたりしながら、ウォーミングアップや準備体操に比重をおきます。従いまして、気候のよい時期より実際にできるローテーションの時間を短くすることも配慮としては必要なことと考えていきましょう。左上の時間配分表を参考に各園でアレンジしてみてください。
其の三.怪我に注意するべし
冬場は身体の動きがにぶくなります。とくにウォーミングアップ後でも手先のかじかみが残ることも多いです。また、乾燥した空気や肌が怪我を招くことも少なくありません。冬場に多い事故例を挙げてみます。
- 器具運搬中に手が滑り、足の上に器具を落とす。
- 鉄棒、登り棒、雲梯で手が滑り落下。
- 跳び箱の着手で手が滑り、前方に頭から落下。
- 平均台で足を滑らせて落下、台で身体を強打。
など、怪我が多いのもこのシーズン特有のこととして考え、充分に注意をしてください。これから、もう少し寒い日も続きそうです。心も身体もホッカホッカになる体育ローテーションを目指してがんばりましょう。
<気候の良い時期の例>
- 器具の準備 3 分
- ランニング 3 分
- 準備体操 4 分
- ローテーション 17 分
- 片づけ 3 分
- 計30 分
<寒い時期の例>
- 導入・ゲーム 4 分
- 器具の準備3 分
- ランニング2 分準備体操(※再度ゲームも) 6 分
- ローテーション 12 分
- 片づけ 3 分
- 計30 分